動力(低圧電力)のプランは、料金表に載っている単価だけでは比べられません。単価が安く見えても、燃料費調整額や市場価格に連動する調整費を足すと高くなる月が生じることがあるためです。比べるのは12か月の総額と、電力の市場価格が高騰したときに上がる幅の2つです。
結論:比べる2つのものさし
- 12か月の総額(基本料金+電力量料金+燃料費調整額+市場価格に連動する調整費+手数料)
- 上振れの幅(燃料費調整に上限があるか、市場価格に連動する調整費に上限があるか)
そのうえで、いまの契約のままにするという選択肢も必ず並べてください。上限のある料金から上限のない料金へ移ると、下がる月がある代わりに、上がる月の幅が大きくなります。
1. 動力プランの料金は5つの要素でできている
| 要素 | 何で決まるか | 見落としやすい点 |
|---|---|---|
| 基本料金 | 契約電力(kW)×単価 | 使っても使わなくてもかかる。使用量が少ない事業所ほど比重が大きい |
| 電力量料金 | 使用量(kWh)×単価 | 季節区分・段階区分の有無が会社ごとに違う |
| 燃料費調整額 | 燃料の輸入価格の変動 | 上限の有無で高騰時の負担がまったく変わる |
| 市場価格に連動する調整費 | 卸電力市場(JEPX)の価格 | 名称が会社ごとに違う(電源調達調整費・市場価格調整額など)。料金表の単価には含まれない |
| 再生可能エネルギー発電促進賦課金 | 国が定める単価 | 全社共通。比較の材料にならない |
「安い」と紹介されるプランの多くは、上2つ(基本料金・電力量料金)の単価が安いという意味です。下2つは料金表の外側にあります。
2. 規制料金と自由料金の決定的な違いは「上限」
大手電力会社が自由化前から提供している料金(規制料金・経過措置料金)には、燃料費調整額に上限があります。たとえば東京電力エナジーパートナーの低圧電力では、燃料費調整は平均燃料価格86,100円を基準に加減算する仕組みで、約款に上限が定められています(特定小売供給約款 令和8年4月1日実施 p.26・別表2)。
自由料金のプランでは、この上限が置かれていないことがあります。その場合、算定に使う燃料価格は上限で打ち切られず、契約・供給条件に定める算定式と適用時期に従って燃料費調整額が算定されます。どちらが安いかは一律には言えないため、12か月の総額と、燃料価格が上がったときの上がり幅の両方で比べます。
詳しくは燃料費調整額の上限の有無で年間コストが激変する理由、市場連動の仕組みは市場連動型電力プランのメリット・デメリットをご覧ください。
3. 比べる7項目
| # | 項目 | 確認するところ |
|---|---|---|
| 1 | 12か月の総額 | 自社の過去12か月の使用量で試算させる。1か月分の明細だけの試算は季節差を見落とす |
| 2 | 燃料費調整の上限 | 約款・料金表に上限の定めがあるか。無ければ高騰時の上振れに歯止めがない |
| 3 | 市場価格に連動する調整費 | 算定式/参照する市場価格と期間/反映の時期/上がる場合と下がる場合/上限の有無 |
| 4 | 契約期間 | 自動更新の有無と、更新しない旨を伝える期限 |
| 5 | 解約金 | 期間内に解約した場合の金額と算定方法 |
| 6 | 手数料 | 払込用紙・紙の検針票などの月額手数料 |
| 7 | 使わない月の扱い | まったく使わない月の基本料金の定め(半額になるか)。季節設備がある事業所では効く |
7項目のうち書かれていないものがある見積書は、比べる材料が足りていません。書面で出してもらってください。
4. 市場連動型で実際に起きたこと(公的な注意喚起)
国民生活センター・消費者庁・経済産業省電力・ガス取引監視等委員会は、電力の小売に関する相談事例を公表しています。「電力・ガス自由化をめぐるトラブル速報!No.19」(令和4年7月13日)には、次の事例が載っています。
約8か月前、大手電力会社に委託されたという事業者が自宅に来て、「電気料金が安くなりお得になる」と言われたので、契約内容の変更だと思い了承した。その後電気料金は1万円以下だったが、今月の請求額は3万6,000円と高額だった。そこで契約書面を確認すると、私が契約したのは大手電力会社とは別の電力会社の市場連動型プランであることが分かった。(中略)解約するには、9,800円の解約金と調達調整費を払わなければならないようだ。
国民生活センター・消費者庁・電力・ガス取引監視等委員会「電力・ガス自由化をめぐるトラブル速報!No.19」令和4年7月13日 事例③(令和4年3月受付)
※これは消費者(家庭)の相談事例です。ただし、市場連動型であることが説明されない、解約に費用がかかるという2点は、事業者の契約でも同じように起こりえます。
5. 🔴 事業者はクーリング・オフの対象外になることがある
ここは、家庭向けの解説記事には書かれていない点です。特定商取引に関する法律(昭和51年法律第57号)第26条第1項第1号は、訪問販売・通信販売・電話勧誘販売のうち、「営業のために若しくは営業として締結するもの」については、クーリング・オフを含む規定を適用しないと定めています。
つまり、事業のために結んだ電力の契約は、消費者と同じようにはクーリング・オフできない場合があります。適用されるかどうかは契約の実態によって判断されるため、一律には言えませんが、「あとで解約すればよい」という前提で契約しないでください。
実務上の対応は次の3つです。
- その場で決めない。書面を持ち帰り、7項目(3章)を確認してから決める
- 説明を受けた内容が契約書面に書かれているかを、文言で照合する
- 試算の前提(使用量・期間・税込か・いつ時点の単価か)を書面に残してもらう
6. 「いまのまま」も選択肢に並べる
次の場合は、切り替えないほうがよいことがあります。
- いま燃料費調整に上限のある料金で契約している(上限のないプランに移ると上振れの幅が大きくなる)
- 使用量が少なく、電力量料金の単価差より基本料金の見直しのほうが効く(→動力の基本料金を下げる3つの方法)
- 契約期間の途中で、解約金が下がる金額を上回る
7. 事業者の撤退・料金改定への備え
登録小売電気事業者は820事業者あります(資源エネルギー庁「登録小売電気事業者一覧」令和8年9月14日現在)。数が多いぶん、事業者ごとに料金の設計も事業の継続性も異なります。
- 契約前に、その事業者の販売実績・供給エリア・料金改定の履歴を確認する
- 料金改定の通知方法と、改定に応じない場合の扱いを契約書面で確認する
- 供給が受けられなくなった場合にどうなるかを、契約前に確認しておく
よくある質問
単価が安い会社を選べば電気代は下がりますか?
下がるとは限りません。料金表の単価には、燃料費調整額と市場価格に連動する調整費が含まれていないためです。12か月の総額で比べてください。
1か月分の明細で試算してもらいましたが、それで足りますか?
足りません。動力は季節で使用量が大きく変わることが多く、1か月分では年間の姿が見えません。過去12か月分で試算してもらってください。
訪問や電話で勧められた契約を、あとから解約できますか?
事業のために結んだ契約は、特定商取引法第26条第1項第1号によりクーリング・オフを含む規定の適用外となる場合があります。契約書面の解約条件を確認したうえで判断してください。
電力会社を替えると停電しやすくなりますか?
送配電の設備は地域の一般送配電事業者が共通で担っているため、契約先を変えても送配電の設備は変わりません。
低圧全体の見直しの順番は低圧(50kW未満)事業者の電気代見直しガイド、契約電力の決め方は低圧電力(動力)の契約電力の決め方をご覧ください。契約電力50kW以上の事業所は法人電力相見積もりの取り方が参考になります。
本記事の単価・条文・公表資料は、2026年9月24日に各公式の原本で確認したものです。料金・制度は改定されることがあります。最新の内容は各電力会社・公的機関の公式サイトでご確認ください。

