契約電力50kW未満の工場は「低圧電力(動力)」の契約になります。電気代の見直しというと節電や設備投資が思い浮かびますが、この規模では契約電力(基本料金)のほうが先です。基本料金は電気を使っても使わなくても、契約電力1kWごとに毎月かかるためです。
結論
- まず電気代に占める基本料金の割合を出す。割合が大きいほど、契約電力の見直しが効く
- 次にいちばん電気を使う時間帯に、どの機械が同時に動いているかを書き出す
- 電力会社の切り替えはそのあと。使用量が多い工場ほど効くが、総額で比べないと判断できない
1. 50kW未満の工場は「低圧電力」
東京電力エナジーパートナーの約款では、低圧電力は動力を使用する需要で、契約電力が原則50kW未満のものに適用されます(特定小売供給約款 令和8年4月1日実施 p.24)。電灯もあわせて契約している場合は、電灯側(契約電流10A=1kWとみなす)と動力側の合計が50kW未満であることが条件です。
50kW以上は高圧の契約になり、基本料金の決まり方も見直しの手立ても変わります(高圧は30分ごとの最大需要電力=デマンドで契約電力が決まる仕組みが使われます)。高圧の工場はデマンドコントロールの基本をご覧ください。
2. まず基本料金の割合を出す
東京電力エナジーパートナーの低圧電力(規制料金)の単価は、基本料金が契約電力1kWにつき月1,098円05銭、電力量料金が1kWhにつき夏季(7/1〜9/30)27円14銭・その他季25円57銭です(p.26)。2026年11月1日からは、基本料金が月1,190円83銭、電力量料金がその他季25円62銭に改定されます。夏季の単価は27円19銭になり、次に使われるのは2027年7月1日〜9月30日です(同社 2026年9月29日発表)。
契約電力20kWの工場で計算すると、基本料金は月21,961円(2026年11月1日からは23,816円60銭)です【計算】。この金額に対して、月の使用量がどのくらいかを並べます(次の表は2026年10月31日までの単価)。
| 月の使用量(その他季) | 基本料金 | 電力量料金 | 基本料金の割合 |
|---|---|---|---|
| 500kWh | 21,961円 | 12,785円 | 約63% |
| 1,500kWh | 21,961円 | 38,355円 | 約36% |
| 3,000kWh | 21,961円 | 76,710円 | 約22% |
2026年11月1日からの単価では、次のとおりです【計算】。
| 月の使用量(その他季) | 基本料金 | 電力量料金 | 基本料金の割合 |
|---|---|---|---|
| 500kWh | 23,816.6円 | 12,810円 | 約65% |
| 1,500kWh | 23,816.6円 | 38,430円 | 約38% |
| 3,000kWh | 23,816.6円 | 76,860円 | 約24% |
※燃料費調整額・再エネ賦課金・国の値引きを除いた試算です【計算】。
受注が少ない月ほど基本料金の割合が上がります。季節や受注で稼働が大きく変わる工場では、忙しい月の数字だけを見ると見直しの余地を見落とします。12か月分を並べてください。
3. 機械の同時使用と契約電力
契約電力の決め方は2つあります(p.25)。
- 負荷設備契約:設置している機械の入力の合計から算定する。使っていない機械も容量として数えられる
- 主開閉器契約:あらかじめ設定したブレーカーの定格電流から算定する。同時に流れる電流を超えなければ数えない
機械の台数が多く、実際には交互に使っている工場では、主開閉器契約のほうが契約電力が小さくなることがあります。ただし設定した容量を超える電流が流れれば遮断されます。生産ラインが止まる損害と比べて判断してください。
確認するのは次の3つです。
- いちばん電気を使う時間帯に、同時に動いている機械はどれか
- 始動時に大きな電流が流れる機械(コンプレッサー・ポンプ・古いモーター)があるか
- すでに使っていない機械が、契約負荷設備に残っていないか
計算方法は低圧電力(動力)の契約電力の決め方、下げ方の全体像は動力の基本料金を下げる3つの方法にまとめています。
4. 稼働しない時期・時間の扱い
約款には、まったく電気を使用しない月の基本料金は半額という定めがあります(p.26)。契約電力20kWなら、その月の基本料金は21,961円から10,980円50銭(2026年11月1日からの単価では23,816円60銭から11,908円30銭)になります【計算】。
ただし条件は「使用量0」です。1kWhでも使えば満額になります。長期の休業がある工場では、動力の回路に待機電力を消費する機器が残っていないかを確認してください。
また、需要場所の負荷の力率は85%以上に保持することが定められています(p.37)。進相用コンデンサは機器ごとの取り付けが原則です。
5. 電力会社・プランの見直しは総額で
経済産業省の節電メニューは、製造業について「電力消費のうち、生産設備が占める割合が高いため、生産工程の節電対策は特に効果的」としています(京都府ウェブサイト掲載版 21頁・PDF作成日2013年6月)。使用量が多い工場では、電力量料金の単価差が効いてきます。
ただし比べるのは単価ではなく12か月の総額と、高騰時に上がる幅です。燃料費調整の上限の有無、市場価格に連動する調整費、契約期間と解約金までを並べてください。詳しくは動力(低圧電力)の電力会社の選び方をご覧ください。
6. 「電気削減機」を勧められたとき
電気代を下げるとうたう機器の勧誘を受けることがあります。製品ごとに仕組みも効果も異なるため、この記事では個別の製品を評価しません。代わりに、確認の手順を示します。
- 何を下げる機器かを分けて聞く。基本料金(契約電力)を下げるのか、使用量(kWh)を下げるのか。仕組みがまったく違う
- 基本料金を下げる話なら、いまの契約電力の決め方を先に確認する。すでに主開閉器契約なら、機器を入れ替えても決め方は変わらない
- 使用量を下げる話なら、どの設備の消費が、どの理屈で、どれだけ減るかを書面で出してもらう
- 支払いの総額(機器代・工事費・保守費・リースなら契約期間の総額)と、下がる金額の年額×契約期間を並べる
- 🔴 事業のために結んだ契約は、消費者と同じようにはクーリング・オフできない場合があります(特定商取引法第26条第1項第1号)。その場で決めない
基本料金を下げる仕組みについては電子ブレーカーとは?基本料金が下がる条件と、導入前に確認する5つのことで、約款にもとづいて整理しています。
よくある質問
工場の電気代は1kWhあたりいくらですか?
契約している会社とプランによって異なります。東京電力エナジーパートナーの低圧電力(規制料金)では、夏季27円14銭・その他季25円57銭です(約款 p.26)。2026年11月1日からはその他季が25円62銭になり、夏季は27円19銭(次に使われるのは2027年7月1日〜9月30日)です。これに燃料費調整額と再エネ賦課金が加わり、基本料金は別途かかります。
稼働していない月も基本料金はかかりますか?
かかります。まったく電気を使用しない月は半額という定めがありますが、1kWhでも使えば満額です。
契約電力を下げると機械が動かなくなりませんか?
主開閉器契約では、設定したブレーカーの容量を超える電流が流れると遮断されます。同時に動かす機械の構成と、始動時の電流を確認したうえで判断してください。生産が止まる損害が大きい工場では、下げること自体を目的にしないでください。
50kWを超えるとどうなりますか?
高圧の契約になります。基本料金の元になる契約電力が、その月と過去11か月の最大需要電力(デマンド)で決まる仕組みが使われ、見直しの手立てもピークの抑制が中心になります。
低圧全体の見直しの順番は低圧(50kW未満)事業者の電気代見直しガイドをご覧ください。
本記事の単価・条文・公的資料は、2026年9月24日に原本で確認したものです。電力会社ごとに約款の定めは異なり、料金は改定されることがあります。最新の内容は各公式サイトでご確認ください。

